いつでも、どこでも、だれにでも 上質な法的サービスを。
いつでも、どこでも、だれにでも 
上質な法的サービスを。

TEL: 095-820-2500

[平日] 9:00~17:00

ホーム法律の話(ブログ)相続・遺産・後見人 > 家業従事に基づく寄与分の認定要件について

家業従事に基づく寄与分の認定要件について

はじめに

相続において、被相続人の家業に長年従事していた共同相続人が、通常の法定相続分を超える取得を求め、寄与分の認定を主張することがあります。例えば、被相続人が経営する農業や飲食業に子が無償で従事し、経営の発展や財産の維持に貢献していた場合、その相続人は「寄与分」として相続財産の一部を特別に取得できる可能性があります。しかし、寄与分が認められるためには、単に家業を手伝っていたという事実のみでは不十分であり、法律上定められた要件を満たす必要があります。
本稿では、東京家庭裁判所家事第5部編著『遺産分割事件処理の実情と課題』(判タ1137号111頁,2004年。以下「判タ特集」として引用します)をもとに、寄与分の認定基準を整理します。

寄与分の意義

寄与分制度は、共同相続人のうち、特別の寄与を行った者が、他の相続人と比較して相続財産の維持または増加に貢献した場合、その相続分において考慮されるものです(民法第904条の2第1項)。すなわち、被相続人の事業に関する労務の提供、財産上の給付、療養看護等により、相続財産の形成・維持に寄与したと認められる者が、相続分の調整を受けることとなります。
判タ特集によれば、「夫婦間の同居、協力、扶助の義務(民法752条)や、親族間の扶養義務(民法877条)の履行として行われた行為は、寄与行為には該当しない」とされています(判タ特集111頁)。したがって、寄与分の認定には、通常期待される範囲を超えた特別の貢献が要件となります。

寄与分の認定要件

1.通常期待される範囲を超える特別の貢献

寄与分の認定においては、被相続人との生活関係に応じて通常期待される程度を超える寄与があったことが要件となります。判タ特集においても、「通常の身分関係から期待される範囲を超えた貢献があってはじめて、寄与分が認められる」とされています(判タ特集111頁)。

2.寄与行為の無償性

寄与行為が対価を伴わずに行われたものであることが要件となります。判タ特集によれば、「被相続人の家業に従事していたとしても、従業員として相応の報酬を受け取っていた場合や、生活費を被相続人の財産から支給されていた場合は、寄与分の認定は困難となる」とされています(判タ特集112頁)。

3. 一定の継続性

寄与行為が単発的なものでなく、一定期間継続して行われた事実が求められます。短期間の活動では、財産維持・増加への影響を証明することが難しく、認定されにくくなります。

4.専従性の要件

被相続人の事業への従事が主要な活動として行われていたことが求められます。他の職業と並行していた場合は、その専従性が認められない可能性があります。

5.財産の維持または増加との因果関係

寄与行為と財産の維持または増加との間に因果関係が認められることが必要です。判タ特集では、「寄与分が認められるためには、寄与行為と相続財産の維持・増加との間に直接的な因果関係が求められる」とされています(判タ特集112頁)。

結論

寄与分の主張には、特別の貢献、無償性、継続性、専従性、財産維持・増加との因果関係といった要件を満たす必要があり、認定は具体的な事実関係に基づいて判断されます。実際に寄与分が認められるハードルは高く、生前に介護や身の回りの面倒を日常的に見ていたというようなケースでも、認められない事の方が多いと言えます。相続の準備段階から専門家の助言を得ながら、適切な対応を進めていくことが望ましいでしょう。

相続手続きは複雑になりがちです。経験豊富な専門家が、スムーズな解決をサポートします。
原総合法律事務所では、相続に関する初回相談を30分無料で承っております。まずは、お電話でお気軽にお問い合わせください。