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認知症の概念と診断基準

 意思能力の判断基準にふれた際、高齢社会の進行に伴い、判断能力の低下した人のした法律行為の有効性が問題となるケースが増えていると述べました。そこでは、認知症についての医学的知見も問題となります。

 下記準備書面は,あくまで一例です。
 案件によって,書面内容は変わりますので,詳しくは,直接お問い合わせ下さい。

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3 認知症の概念と診断基準
(1) 国際的な診断基準
 まず,前提として,認知症の概念と診断基準を確認しておく。
 この点については,国際的な精神疾患分類体系であり診断基準である世界保健機構の「疾病及び関連する健康の諸問題についての国際統計分類第10版」(International Statistical Classification of Diseaseand Related Health Problem 10th Revision:ICD-10,1992年)とアメリカ精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル第4版用修正版」('Text Revision' of Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders , 4th Edition:DSM-Ⅳ-TR,2000年)に依拠するのが一般である。
(2) 認知症の臨床記述
 そこで,ICD-10による認知症の臨床記述をみると,次のとおりである(世界保健機構,融道男ほか監訳『ICD-10 精神および行動の障害-臨床記述と診断ガイドライン-』57頁)。
「認知症は,脳疾患による症候群であり,通常は慢性あるいは進行性で,記憶,思考,見当識,理解,計算,学習能力,言語,判断を含む多数の高次皮質機能障害を示す。意識の混濁はない。認知障害は,通常,情動の統制,社会行動あるいは動機づけの低下を伴うが,場合によってはそれらが先行することもある。この症候群はアルツハイマー病,脳血管性疾患,そして,一次性あるいは二次性に脳を障害する他の病態で出現する。」
(3) 認知症の診断ガイドライン
 また,ICD-10の診断ガイドラインは,次のとおりである(前掲書58頁)。
「診断に第一に必要とされるのは,上記のように,日常生活の個人的活動を損なうほどに記憶と思考の働きがいずれも著明に低下していることが明らかなことである。記憶障害は典型的には新しい情報の記銘,保持および追想の障害であるが,以前に習得したり慣れ親しんだ事柄も,とくに末期には失われることがある。認知症は記憶障害だけを示すのではない。思考と判断力の障害および思考の流れの停滞も時に認められる。」
 すなわち,認知症とは,認知機能の全般性低下をいうが,実際には,記憶能力,認知機能などの障害の有無と程度を臨床的に観察し,判定される。その判定を容易に行うための簡易なテストが,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R),Mini-Mental State Examination(MMSE),多面的初期認知症判定検査(MEDE)などである。しかし,このようなテストによらずとも,記憶能力,認知機能などの障害が認められれば,認知症を疑うことは可能である。
 また,診断ガイドラインとしては,画像診断は要求されないが,臨床上,認知症の鑑別に画像診断を用いることがある。その場合,従前は,MRIがよく用いられたが,最近では,MRIでみられる脳萎縮像は非特異的なもので,他の脳萎縮性疾患との鑑別疾患には役立たないとして,SPECTが用いられるようになってきている。