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雇用調整助成金申請しました(実録)

2020/05/10 
 
 所長弁護士原章夫から、ちょっと業界の「内輪ネタ」です。かつ長文です。
 とはいえ、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業主の皆さんにとっては、共通の関心事かと思います。参考になれば幸いです。
 
 新型コロナウイルス感染症の影響は、法律事務所にもあります。
 法律相談に行くのも「不要不急の外出」と思い、躊躇されれるのかもしれません。緊急事態宣言の頃から、急に問合せの電話が減り、法律相談の数も、ひいては事件の依頼を受ける数も減りました。また、交渉の相手方との連絡も取りづらく、裁判所の期日も多くが延期(取消し)され、事件の解決も遅れがちです。
 そうすると、事務所の収入(売上)にも影響が出ます。3月は、前年同月比10%ちょっとの減収でした。同様の傾向は、他の法律事務所にもあるようです。
 とはいえ、依頼を受けて処理中の事件はあり、解決すれば報酬金収入はあるので、飲食店、サービス業、観光業等の皆さんのような重大な影響とまではいえず、そういった業種の皆さんは、本当に大変だろうと思います。
 
 もっとも、原総合法律事務所もそうですが、電話やweb会議による相談もできます。また、事務所には、消毒液もありますし、窓を開け換気にも気をつけ、広い相談室を使うようにしています。もちろん、スタッフもマスク着用ですし、相談者の皆さんにもマスクの着用をお願いしています(マスクをお持ちでない方は、ご相談ください。)。近く、相談室のアクリル板も届く予定です。
 相談は、早いほど解決も早く、より良い解決が期待できます。
 新型コロナウイルス感染症の感染を心配される方も、まずは、お電話いただければと思います。
 
 さて、そこで、本題ですが、当事務所では、新型コロナウイルス感染症による経営環境の変化に対応し、また、感染拡大を防ぐため、スタッフの一部を休業したり、営業時間を短縮しています。しかし、スタッフの給与は減額していません。
 そのように、新型コロナウイルス感染症の影響で事業活動を縮小しても、休業手当を支払い、雇用を維持している事業主には、以前よりも緩やかな条件で「雇用調整助成金」が支給されるようになりました。
 3月までは前年同月比10%、4月からは前年同月比5%が支給の条件と聞いていたので、何となく、当事務所も、その条件に当てはまるのではと思い、売上関係の資料、雇用保険関係の資料、賃金台帳とかをそろえた上、厚生労働省のウェブサイトで雇用調整助成金について調べたのが、連休に入った4月29日でした(平日は、日々の仕事に追われ、そんな時間はありません。)。
 
 ガイドブック(簡易版)や様式をダウンロードし(厚生労働省の雇用調整助成金のウェブサイトにあります。)、読み込んでみましたが、分かりにくいこと。。。
 司法文書や行政文書を読みなれている弁護士であっても、どこが重要か見付けるのに一苦労でした。
 しかも、表現が分かりにくい。正確に表現しようとしていることは分かりますが、そうであれば、別に、もっと分かりやすい案内の書面も用意すべきでしょう(ガイドブック(簡易版)でも、まだ分かりやすいとはいえません。)。
 さらに、様式の文字が小さく、読むだけでも疲れてしまいます。裏面に、記入上の注意があって、これが実は大事なのですが、文字が小さい上、行間が狭く、そもそも読む気をなくしてしまいます。
 
 そうして読み込んで、ここがポイントだと思ったのが、「対象期間」、「判定基礎期間」、「支給対象期間」という紛らわしい用語の意味の違い、支給額計算の基礎となる前年度の「雇用保険の保険料の算定基礎となる賃金総額」、前年度の「1箇月平均の雇用保険被保険者数」、「賃金締切日」=給料算定の締め日までの休業日数、短時間休業(時短)の時間数などでした。そのそれぞれの意味を説明するのがこの記事の目的ではないので、説明はしませんが、これから申請しようとする事業主の皆さんは、この言葉が出てくるところに注意して読んでみることをお勧めします。
 
 これを読んで何となく分かったのは、3月の売上減を理由に申請をするのであれば、4月30日までに申請の手続をしなければならないということでした。今日が4月29日、明日申請しなければ、改めて、4月の売上で資料を揃え、やり直さなければなりません。
 そこで、慌てて、何とか29日のうちに手元の資料を整理し、申請の様式を作成しました。ちなみに、計画届と支給申請の2段階の手続を一度に進め、特に、支給申請の様式については、作成の順番があるのですが、その作成の順番と様式の番号の順番が違うのには面食らいました。ダウンロードしたエクセル表に、順番に必要な数字を入力していくと、表に埋め込まれた計算式によって、支給額が出てきます。様式を作成した時点で、支給額は分かるわけです。
 
 そうして、翌30日になり、受付窓口を探したのですが、これが、また分かりにくい。長崎市の場合は、長崎労働局職業安定部職業対策課というところでした。ちなみに、当事務所の道路をはさんだ向かいのビルで、当事務所のドアを出て、受付窓口に着くまで1、2分でした。
 問合せが殺到していると報道されていたので、まず、電話してみたところ、受付の予約はできないとのことで、ただ、電話を受けた時点で、受付待ちの人がいるかは教えてもらえるとのことでした。
 そこで、改めて、電話をかけ、受付待ちの人がいないことを確かめ、出向いたのですが、そのわずかな時間に問合せの人が来たようで、受付待ちになってしまいました。窓口が3つで、そのとき対応していた人は2人でした。常に窓口を全て使っているわけではないようでした。
 
 しばらくして、順番になり、持参した書類を提出したところ、20分あまりかけて、内容をチェックされ、1人分、1つの資料が足りないとの指摘を受けただけで、他には特に不備の指摘もなく、無事、受け付けてもらえました。ちなみに、その資料が足りないことは分かっていたので、それを実質的に補う資料を持参していたのですが、形式を整えることが重要なようです。行政庁への申請書類は、とにかく形式を整えることが重要なことを再認識させられました。司法に関わる者は、形式よりも実質・内容を重視するものなのですが、こんなところで、司法と行政の違いを感じました。
 事務所に帰り、すぐに、形式を整えた資料を作成し、スタッフが持参して、4月30日の申請を終えました。
 受け付けてもらったときの説明では、2週間で支給の予定とのことでした(その後、報道で、以前は支給まで2か月かかっていたのを1か月に短縮するとされていたのを目にしたので、本当に2週間で支給されれば、報道より早いことになります。)。
 その後、労働局から問合せや資料の追加等の連絡はないので、特に、問題なく、手続が進んでいるのだろうと思っています。
 
 ところで、この記事を書いている5月10日のNHKの地域ニュースで、この雇用調整助成金、九州・沖縄各県で約35,000件の相談がありながら、支給決定は、5月8日までに、熊本県62件、福岡県44件、長崎県29件にすぎないとの報道がありました。
 当事務所は、経理関係、労務関係の資料が整っていて、司法文書や行政文書を読みなれている弁護士ですから、1日の準備で受付までたどり着けましたが、確かに、多くの中小企業では、資料を準備するのも大変でしょうし、何よりも、様式の各欄に、何を書けばいいのか理解し、正しく各様式を作成するのは難しいだろうと思いました。
 受付を待つ間、他の問合せに訪れた人の話しが、聞こえてきましたが(そのこと自体、個人情報の保護という点から、どうかと思いました。)、皆さん、何度目かの来所のようで、しかも、受け付けてはもらえず、なお、足りない点の説明を受けていました。
 不満の声を受け、更に手続を簡略化する方針とのことですが、どこがポイントなのかを示した、もっと分かりやすい案内が必要だと実感しました。
 
 ちなみに、こういった助成金等の申請手続は、社会保険労務士が扱うところで、申請書等にも、社会保険労務士が提出代行、事務代理することを前提とした記載欄があります。弁護士は、オールマイティーな資格で、社会保険労務士の資格もあるのですが、弁護士にしかできない業務で手一杯で、社会保険労務士の業務まで手が回らないのが現実です。
 とはいえ、雇用調整助成金については、現実に自分で手続を行ったので、相談に応じたり、助言することはできるのかなと思っているところです。