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非接触型体温計の医療認証?

弁護士原幸生による記事です。

1 新型コロナウイルス感染症拡大予防対策としての検温

 新型コロナウイルス感染症拡大予防のための対策を講じている企業が増えています。対策の一環として、入店時の検温チェックも広く行われています。このため、非接触型体温計の需要が高まっているようです。

 先日、オムロンヘルスケア株式会社が、皮膚赤外線体温計500本を、内閣府に寄付したとの報道もありました(ただし、これは自治体や医療機関等における検温スクリーニングを目的としたもので、一般家庭向けの販売は予定していないようですが。)。現在、病院の受付、公共施設を含め、様々な店舗の入り口でも、当たり前のように、検温チェックがなされています。

 このような需要の拡大もあってか、Amazon.co.jp等で検索すると、かなりの数の非接触型体温計がヒットします。その中には、安価な外国製のものもあるようですが、販売元の確認はしておく必要があります。

2 医療機器認証制度

 前提として、医療機器は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)に基づき、そのリスクによる製造販売規制が行われています(法第23条の2以下)。厚生労働大臣の指定により、リスクの大小に応じて、最も小さい「一般医療機器」(クラスⅠ)から順に、「管理医療機器」(クラスⅡ)、「高度管理医療機器」(クラスⅢ及びクラスⅣ)と分類されています(法第2条5項、6項、7項)。

 不具合が生じた場合でも、人体へのリスクが極めて低いと考えられているクラスⅠの「一般医療機器」は、承認及び認証は不要であり、厚労省への届出で足りるとされています。他方で、クラスⅡ~クラスⅣの「管理医療機器」及び「高度管理医療機器」については、厚生労働大臣の承認、または第三者登録認証機関の認証が必要です。

 ここで、非接触型体温計については、「皮膚赤外線体温計」との名称で指定を受け、クラスⅡの「管理医療機器」に分類されており、日本国内で製造販売するには、第三者登録認証機関の認証が必要とされています。なお、認証品目のリストがPDFデータで公開されているため、「皮膚赤外線体温計」で検索すると、認証済みの機器を調べることができます(https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/devices/0026.html)。ちなみに、冒頭で紹介した、オムロンヘルスケア株式会社製の体温計は、リストのデータを見ると2020年5月26日付けで『オムロン皮膚赤外線体温計MC-720』として認証されていることが分かります。

3 認証済みかどうかの見分け方は?

 このような認証済みの非接触型体温計については、供給が追いついていないのか、欠品していたり、入荷未定のものや、医療従事者のみの購入とされているものが多いようですが、中には販売再開している製品もあるようです(※2020年8月現在)。

 認証済みの製品か否かは、上記のリストで確認することができますし、認証済みの製品であれば、通常は医療機器認証番号が表示されているため、逐一リストをチェックするまでもなく、認証番号の有無で確認することも可能です。

 なお、ざっと確認したところ、現在在庫ありとしてAmazon.co.jp等で売られている製品の中には、医療機器認証番号の表示も見当たらず、未認証の製品も相当数ある印象です。当然、Amazon.co.jpの規約上、未認証の医療機器の販売は禁止されているので、違法出品の事実が判明すれば出品停止となるのですが、実際は監視が追いついていないのが現状です。

4 今後はどうすればよいか

 昨今の情勢を踏まえれば、仮に検温も実施せずにクラスターが発生したとなれば、対策が不十分だったとして、社会的非難にさらされるリスクも考えうるところであり、民間企業としては、未認証の機器を利用してでも検温を実施すべきと判断することは、それ自体は理解できるところです。

 ただし、平時であれば、確認もせず無許可販売業者から未認証機器を購入したとなれば、それ自体が企業の信用失墜に繋がるところですし、そもそも未認証の医療機器は、安全性や性能などの品質が保証されていないため、原則として購入は避けるべきでしょう。

 今後、認証済み非接触型体温計の供給状況が改善された場合は、やはり認証済み製品の購入をお勧めします。