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裁判員裁判が始まります2

前回に続き、裁判員裁判についてお話したいと思います。今回は、実際の裁判(公判)手続きについてです。

裁判手続き1(手続き開始)

裁判員の選任が終わると、実際の裁判(公判)手続きが始まります。
ちなみに、刑事裁判の手続きのことは「公判」「公判手続」といわれます。
公判手続は、裁判官3名と、裁判員6人が裁判官席に座って行われます。

まず、被告人の出頭の確認や黙秘権の告知などから始まります。

その後、検察官が、どのような事実について被告人を裁判にかけているのかについて、起訴状という文書を読み上げます(起訴状朗読といいます)。

その後、被告人がその事実について争うのか認めるのかを述べます(罪状認否といいます)。
さらに、弁護人も同様に意見を述べます。
このとき被告人も弁護人も重要な事実を争わず、正当防衛なども主張しない場合、それは「自白事件」となります(無罪を主張する場合は「否認事件」)。
被告人も弁護人も、犯罪を犯してしまったことを認めているので、有罪である可能性が高いです。 そのため、自白事件については、どの程度の刑を科すべきかが問題となります。

その後、検察官・弁護人が、自分たちが証明しようと考えている事実を述べます(冒頭陳述といいます)。
否認事件の場合は、「アリバイがある。」とか、「目撃者が目が悪かったし、目撃したのは夜で、周囲に街灯もなかった。」などを主張します。
自白事件の場合は、「被告人は深く反省しています。」といった主張をします。

裁判手続き2(~証拠調べ)

その後、証拠調べに入ります。

書面(供述調書など、「書証=しょしょう」といいます。)については、検察官・弁護人が内容を読み上げます(朗読)。
「書面を渡してもらい、読むのではないの?」と思われるかもしれませんが、それはしないのが裁判所の考えです。
書面は、多いときは1000ページを超えることもあり、専門的な用語で書かれているところもあるので、それを裁判員の方に渡して読んでもらうのでは負担が大きすぎるからです。

そのようなことで朗読するのですが、朗読されても、頭には残りません。
そこで、せっせとメモを取ることになります。
ただ、朗読にも時間制限があります。そのため、裁判員のメモの速度に合わせてゆっくり朗読するわけにもいきません。そのため、一生懸命メモするしかないのが現状です。
負担を少なくするため、なるべく証拠を限定するように努力はされているのですが。

物(凶器など、「物証=ぶっしょう」といいます。)は、その場で見てもらいます。

人(証人や鑑定人など)については、質問をして、その回答を聞きます。
これも一生懸命メモをとるしかありません。
学生に戻ったような気分にかもしれませんね。

裁判手続き3(~結審)

証拠を調べ終わったら、弁護人・検察官から意見が述べられます。
弁護人の最終意見を弁論、検察官の最終意見を論告といいます。
論告の最後に求刑するのが通例なので、論告求刑といわれます。
弁護人も、必要に応じて求刑についての意見を述べることになると思います。

最後に、被告人が意見を述べることになっています。

法廷での手続きは、これでいったんは終りです。

裁判手続き4(~評議)

その後、別室で、裁判官と裁判員で評議をします。
まず、有罪か無罪かを決めます。
有罪の場合は、どのような刑を科すかを決めます。

有罪無罪については、有罪と思えば有罪の意見を述べることになります。無罪と思うか、有罪か無罪か分からない場合は、無罪の意見を述べることになります。 有罪とすることができるのは、有罪だという確信を得られた場合だけだからです。

有罪と無罪は二者択一ですが、量刑は1~20年間の懲役であったり、無期懲役であったり、死刑であったりします。 さすがに死刑というのは、かなり躊躇するのかもしれません。

なお、法律で定められている刑(殺人罪なら死刑・無期懲役・5~20年の懲役)を「法定刑」といいます。 法定刑の範囲で実際に被告人に科す刑(「宣告刑」といいます。)を決めることになります。

懲役の期間も、決めようがないといえば決めようがないものだと思います。 検察官、弁護人、被害者の求刑を基準となることが多いと予想されますが、それに拘束されることはありません。

裁判手続き5(~判決)

判決の内容が決まったら、法廷に戻ります。
そして、判決の内容を被告人に言い渡します。

判決の内容に不服があれば、高等裁判所に控訴をすることができます。
裁判員裁判の導入で、今までに比べて、言い渡される刑が重くなることも予想されます。
そのため、量刑が不当であるとの控訴されることが多くなるかもしれません。
ただ、「控訴審としては、よほど不合理であることが明らかな場合を除いては、第一審の判断を尊重するべきではないか。」といわれています。 そのため、基本的には、第一審で裁判員と裁判官が決めた刑が維持されるのではないかと思います。

裁判員制度は、これまでの裁判制度を大きく変更するものです。そのため、実際にやってみないと、その功罪は評価できないと思います。
廃止されたり、対象となる事件が縮小されたりすることも予想されますが、裁判員を務めることは、非常に意味のある経験になるのではないかと思います。