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人身傷害保険と対人賠償、どちらから請求するか

前回の確認からです。
前提として、自分に過失(落ち度)があると、その分、賠償を受けられる額が減額されます(過失相殺→こちら)。
ところが、自分の保険に人身傷害保険が付いていると、結果として、過失相殺の減額がない解決が可能です(正確には、そうはならない場合もあるのですが、その場合のことは、改めて説明します。)。

ただし、請求の順序に、注意が必要です。
まず、自分の人身傷害保険を先に請求しなければなりません(人傷先行)。
そうして、人身傷害から支払われた額は、まず、自分の過失相殺分の支払に充てられます。
次に、全損害額から、人身傷害の支払額を差し引いた残額を加害者側の対人賠償保険に請求します。
そうすると、加害者側損保は、過失相殺を主張することができません。

以前は、この場合にも、加害者側損保は、過失相殺分を減額できるという考え方がありました。
しかし、最高裁判所が、人身傷害から支払われた額は、まず、自分の過失相殺分の支払に充てられるという判断をしました(最高裁平成24年2月20日判決→こちら、最高裁平成24年5月29日判決)。
この最高裁判例により、この問題は、被害者側に有利に決着が付きました。

では、逆に、加害者側損保から先に過失相殺分を引かれた賠償を受け、その後、自分の人身傷害に請求するとどうかというと(対人賠償先行)、人身傷害からは、過失相殺分全額の支払を受けられるわけではないという考え方があります。もちろん、過失相殺分全額の支払を受けられるという考え方もあるのですが、この点については、最高裁判所の判断がなく、地方裁判所や高等裁判所の判断が分かれています。

対人賠償の支払を先に受けると、人身傷害から、過失相殺分全額の支払を受けられないかもしれないリスクがあるということですから、人身傷害保険に先に請求すべきということになります。