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労働問題Q&A

 多くの皆様は、日々、働いておられることと思います。そのため、様々な疑問や問題を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
当事務所では、労働者側の立場からも労働事件に取り組んでおります。そこで、今回は、労働者から多く寄せられている相談をご紹介いたします。皆様の悩みにも通じるところがあるかもしれませんので、ぜひ、参考になさってください。

【相談1】
 採用内定が取消されてしまいました。就職することはできないのでしょうか。

 
 採用内定とは、判例上、「就労又は労働契約の効力の発生始期付きで解約権留保付き」の労働契約の成立と解釈されています。すなわち、就労関係が○年○月○日に始まるけれども、それまでに、正常な勤務ができなくなった場合は解約できる労働契約が成立していることになります。
 このように、採用内定といっても、労働契約が既に成立している以上、内定取消しは使用者による解雇に当たりますので、適法な理由がなければ取消しは認めらません。この内定取消しが適法と認められる例としては、病気、けがなどにより正常な勤務が不可能になった場合、学校を卒業できなくなった場合、本人が内定時に申告していた経歴・学歴の重要部分に虚偽があったことが判明した場合、学生時代に暴力的な刑事事件で逮捕された場合などが挙げられます。
 そして、内定取消しが違法な場合、このような内定取消しは無効になりますので、内定者は、就労開始予定日以降、就労して賃金の支払を受けることができるようになります。なお、慰謝料等の損害賠償請求が認められることもありますし、このような使用者の下では就労したくないと思った場合には、就労せずに賃金に相当する額の損害賠償を請求することも考えられます。
ただ、後日、使用者が、“内定者は、内定取消しを暗黙のうちに承諾した”との弁解をしないよう、内定取消しの連絡を受けた方は、まず、使用者に対して内定取消しを撤回するよう請求しておいてください(内容証明郵便で通知する方法が、後のトラブルを避けられます。)。

【相談2】
 入社するときに聞いた労働条件と、実際の労働条件が異なっていました。入社を決める際に聞いた労働条件を使用者に主張することはできますか。

  
 労働期間・労働場所・賃金額・労働時間・休日・退職に関する事項等の労働条件は、労働者と使用者との個別的な合意(労働契約)によって定められるのが原則です。また、労働条件の変更も、労働者と使用者の合意によるのが原則となっています。ただし、合意といっても無制約ではなく、合意したからといって、法に反する労働者に不利益な内容の労働条件は、その部分について無効となり、法の定める基準によることになります。
 そして、使用者には、労働契約締結に際して、労働者に対し、労働条件を明示する義務が課せられており、労働契約締結時までに説明された(口頭によるものも含みます。)労働条件が労働契約の内容になります。
 したがいまして、労働者は、原則として、労働契約締結の際に説明を受けた労働条件を使用者に主張することができます。
 今回の相談者は、入社するときに聞いた労働条件の下で、使用者と労働契約を締結したわけですから、入社を決める際に聞いた労働条件を使用者に主張することができます。

【相談3】
 支店長として、他の従業員を指導・指示することはできますが、他の従業員と同じように定時で働いており、役職手当といったものも支給されていません。しかし、使用者から、管理職だから残業代は支払わないと言われました。残業代を請求することはできないのでしょうか。

  
 労働基準法における法外残業(時間外労働)についての規定は、「監督若しくは管理の地位にある者」については適用されませんので、「監督若しくは管理の地位にある者」は、法外残業について、労働基準法に基づく割増賃料(いわゆる残業代)を請求できないのが原則です。
 しかし、労働基準法上の「監督若しくは管理の地位にある者」とは、労働条件の決定その他労働管理について経営者と一体的立場にある者をいい、名称にとらわれず、①職務の内容、権限、責任、②出、退社等についての自由度、③その地位にふさわしい処遇などから、実態に即して判断すべきとされています。
 相談者は、他の従業員と同じように定時で働き、役職手当も支給されていないということですので、実態としては、労働基準法上の「監督若しくは管理の地位にある者」とはいえず、残業代を請求できます。

【相談4】
 使用者から、一方的に、給与の減額、約束されていたボーナスと退職金カットを言い渡されました。これに応じなければいけないのでしょうか。

 賃金(給与)とは、労働の対償として使用者から労働者に支払われるものをいい、労働協定、就業規則、労働契約などで支給することと支払条件が定められていて、使用者に支払義務がある賞与(ボーナス)や退職金も賃金に含まれます。そして、賃金等の労働条件を、使用者が、労働者の同意なく一方的に切り下げることは原則としてできず、このような切り下げは無効となりますので、労働者は、従来の労働条件に基づく契約内容の履行を求めることができます。
 個別的な同意がなくても、例外的に、就業規則の変更によって労働条件の切り下げが許される場合があります。しかし、就業規則の変更は、無制限に認められるものではなく、法律上必要な手続(労働者への意見聴取や労働基準監督署への届出等)をとっていること、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、その変更が合理的なものであることが必要です。
 さらに、個別査定に基づく賃金の切り下げについても、労働契約上の根拠に基づく合理的制度のもとで、合理的な査定がされた場合にのみ合法化されるので、使用者が査定によって、賃金の切り下げを自由にできるわけではありません。
 今回の相談者の場合、合理的理由なく、使用者が一方的に給与の減額、ボーナスカット、退職金カットを言い渡してきたわけですから、このような切り下げは無効となります。したがいまして、相談者は、従来の労働条件に基づく給与、ボーナス、退職金を請求することができます。

【相談5】
 不況のあおりを受けて、今度、整理解雇が行われるようです。私は、定年間近で、解雇対象になってしまいそうなのですが、このような整理解雇は許されるのですか。

 
 一般に、解雇には正当事由を要し、これを欠く解雇は解雇権濫用として違法になります。整理解雇についても同様で、整理解雇の場合、判例では、解雇権濫用になるかの判断基
準として、①整理解雇の必要性、②整理解雇の回避努力義務、③基準・選定の合理性、
④労使交渉等の手続の合理性の4要件があげられています。ただし、これらの要件全てを
充たされなければ整理解雇が無効となるのか、全てを充たす必要はなく総合考慮して判
断されるのかは、裁判例により区々で確立していません。
 この中では、特に③基準・選定の合理性が問題になります。今回のように、年齢を人選
基準とし、定年間近な労働者を解雇の対象とした場合について、高齢者は再就職が困難で
あることからすると、定年間近であるとの理由のみでは合理性があるとはいえません。し
たがいまして、他の事情を考慮することなく、定年間近な労働者のみを対象とした整理解
雇は許されないものと考えられます。

 
 その他、様々な相談が寄せられております。
労働問題を解決する方法としては、交渉、行政機関の利用、仮処分の申立て、本訴提起、労働審判の申立て等があります。しかし、様々な法律や裁判例がありますので、ご自分では判断・対処しきれないことが多いと思います。不利益な事項について、使用者から納得できない申入れを受けた場合には、即答せず、「少し考えさせてください。」と返答した上で、まずは、当事務所まで相談にいらっしゃってください。問題は一人で抱え込まずに、相談されることをお勧めします。