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健康保険の切り替え(その2)

前回記事(健康保険の切り替え(その1))の続きとなります。
一括対応終了後(治療費打ち切り後)の健康保険の切り替えについて、消極的な対応をする医療機関がある理由としては、いくつか考えられますが、
①交通事故では健康保険が使えないと単純に誤解している
②自由診療から保険診療へ変わると医療機関にとって減収となるから
③終診後に自賠責様式の診断書を作成することが面倒
④終診後に自賠責様式の診療報酬明細書を再度作成することが面倒
といった理由が考えられます。

①については、前回記事で述べた通りです。
②については、自由診療よりも保険診療の方が一点の単価が安いため、医療機関としては、減収となることはそのとおりです。
減収を嫌がって診療拒否すること自体が問題のように思いますが、そのような病院が翻意して健康保険での通院に応じるとは思えませんし、自由診療の10割負担で通院を継続することも現実的ではないでしょうから、やはり転院を検討することとなるでしょう。

③や④ですが、実際上は、このような理由で、健康保険での通院を断っている医療機関が多いのではないかという印象です。
どういうことかというと、治療費打ち切り後に、健康保険で通院を継続した場合でも、症状固定の時期になれば、その時点で通院終了となります。
通院終了となれば、それまで患者において支払っていた3割負担分の治療費については、さしあたって、被害者請求として、相手方の自賠責保険に対して請求することが検討されます。
被害者請求の手続きがなされると、請求された治療費が相当なものか否かについて、損害保険料率算出機構(自賠責調査事務所)というところが調査をしますが、これは、書面審査によって判断されます。

そこで、請求を認めてもらうために、請求する側で、必要な書類を取りそろえて、自賠責保険会社へ提出する必要がありますが、自賠責保険会社は、書式にうるさいため、所定の書式以外の診断書・診療報酬明細書だと、受付をしたがりません。
文献上は、必要事項の記載さえあれば、医院備え付けの診断書でも差し支えないとありますし、自賠責様式診断書の裏面にも、同趣旨の記載があるのですが、現実には、これを嫌がる自賠責担当者もいます。
そこで、自賠責との無駄な押し問答を避けるためにも、医療機関に対して、対象期間(打ち切り後~終診)の通院について、自賠責様式の診断書と診療報酬明細書を作成するよう依頼することとしています。
これに対しては、快く応じてくれる病院もあれば、そうでない病院もあります。
病院としては、医院備え付けの書式の診断書でもよいはずのものを、わざわざ自賠責様式の書式で作成することについて、抵抗を感じるのかもしれません。特に、診療報酬明細書については、既に健康保険組合等へ提出しているのだから、2度も同じ明細書を作る必要は無いと考えるのでしょう。

この点、診断書については、自賠責様式であろうが、医院備え付けのものであろうが、記載内容はさほど変わらないため、最終的には作成に応じてもらえる印象です。
他方、診療報酬明細書については、既に健康保険組合等へ提出する用に作成しているのだから、再度の作成は病院としても抵抗感が強いのか、どうしても作成してもらえないことがあります。
この点、既に健康保険組合へ提出されている診療報酬明細書については、患者から健康保険組合に対して、開示請求をすることもできるのですが、実際に開示されるまでに、時間を要してしまうのが難点です。
そこで、どうしても医療機関が診療報酬明細書を作成してくれないような場合は、代わりに、医療機関から患者へ発行された領収書を添付して、提出することで対応しています(今のところ、これを理由に支払いを拒否されたことはありません)。

もちろん、自賠責様式の診断書・診療報酬明細書について、快く作成いただける整形外科もありますが、当事務所では、交通事故を扱う件数が比較的多いこともあり、診断書取り付けにかかるトラブルは、それなりの頻度で遭遇します。
個別事情に左右され、これと言った解決方法もないため、交通事故被害者側の交渉を扱う代理人としては、実務上、頭を悩ませる問題の一つと言えます。
たとえば、診療報酬明細は医院から取り付けることはせず、直接健康保険組合等へ開示請求し、診断書については一括対応分だけを用意し、そのほかについては、カルテ等で代用するという方法でもよいのかもしれません。