いつでも、どこでも、だれにでも 上質な法的サービスを。
いつでも、どこでも、だれにでも 
上質な法的サービスを。

TEL: 095-820-2500

[平日] 9:00~17:00

ホーム法律の話(ブログ)相続・遺産・後見人 > 成年後見制度、ご存じですか?

成年後見制度、ご存じですか?

 当事務所には、高齢の父が認知症につけ込まれて高額な商品を買わされたとか、老人ホームにいる母の年金を息子が勝手に使い込んでしまい困っているというような相談が数多く寄せられます。

 今回は、このような場合に本人を守り支えるための法的制度「成年後見制度」についてお話したいと思います。

Q1
 最近よく耳にする「成年後見制度」とはどのようなものですか。

A1
 「成年後見制度」とは、認知症、知的障害、精神障害等によって物事を判断する能力が不十分な方について、本人の権利を守る援助者(成年後見人等)を選ぶことで、本人を支援する制度です。

 
 成年後見制度には、大きく分けて「任意後見制度」と「法定後見制度」という2種類が存在します。
 前者は、将来判断能力が不十分となった場合に備えて、本人が判断能力の十分なうちに、誰にどのような支援をしてもらうかを予め契約により決めておくものです。
 後者は、申立てにより、家庭裁判所で成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)を選んでもらうものです。成年後見人等は本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたりすることで本人を保護します。法定後見制度については、本人の判断能力に応じて、「後見」「保佐」「補助」が存在します。

Q2
 具体的にはどのような人が「成年後見制度」を利用できますか。

A2
 「成年後見制度」は、判断能力が不十分な方を支援する制度ですから、身体の障害で生活に支障が生じていても、それだけの理由でこの制度は利用できません。利用できる方の例としては、認知症、知的障害者、高次脳機能障害(脳梗塞・交通事故等で脳に損傷を受けて寝たきりになっている場合など)、統合失調症など精神上の障害により判断能力が不十分な方が考えられます。

Q3 
 私の父は1年前脳梗塞を患い、現在入院中ですが、ほとんど寝たきりの状態でしゃべることもできません。
 
私は父の入院費用を支払うため定期預金を解約しに銀行に行きましたが、本人ではないということで応じてもらうことができませんでした。これでは入院費用が支払えません。どうしたらよいですか。

A3
 あなたはお父さんの子どもではありますが、代理人ではないので、預金の解約につき法律上何の権限もありません。そこで、あなたがお父さんに代わり手続を行えるよう、後見開始の審判の申立を行うことが考えられます。
 
 後見の対象となるのは、判断能力が全くない方ですが、あなたのお父さんは寝たきりでしゃべることも出来ない状態ですので、これに当たると思われます。後見人には、日常生活に関する行為を除き、財産管理についての全般的な代理権・取消権が与えられます。あなたが後見人に選任されれば、お父さんのために預金の解約手続をあなた自身で行えるようになります。

Q4 
 
私の母は、2年前に父が亡くなってから一人暮らしをしています。
 以前から物忘れがあったのですが、最近では症状が悪化し、買い物の際にも1万円札を出したか5千円札を出したか分からなくなることが多くなり、日常生活にも支障が出ています。かかりつけの医師から診断書を取り寄せてみたところ、常に援助が必要とのことでした。

 そこで、私としては、母が暮らしている自宅を売って私と同居させようと考えています。これから私はどのような手続をとればよいでしょうか。

A4
 あなたのお母さんは、中程度の認知症と思われますので、保佐開始の審判開始の申立てをし、併せて自宅を売却することについて代理権付与の審判の申立てをすることが考えられます。あなたが保佐人に選任されれば、家庭裁判所より居住用不動産の処分につき許可の審判を受けて、本人の自宅を売却することができるようになります。

Q5
 私の母は、最近訪問販売員から必要のない高価な品物を多数購入するなど、認知症の症状が見られるようになりました。私が目を離すとすぐに契約してしまうので、今後もこのようなことが続くのではないかと心配です。
 かかりつけの医師から診断書を取り寄せてみたところ、援助が必要な場合があるとのことでした。どうしたらよいですか。

A5
 あなたのお母さんは軽度の認知症で判断能力が不十分と思われますので、補助開始の審判の申立てをし、あわせて本人が高額な商品を購入することについての同意権付与の審判の申立てをすることが考えられます。
 補助人には特定の事項の一部について同意権や取消権、代理権を付与することができます。あなたが補助人となり、同意権が与えられると、お母さんはあなたに断りなく高額な商品を購入した場合、あなたはその契約を取り消すことができるようになります。

Q6
 誰が申立てをすることができますか。

A6
 申立てをすることができる方は、本人、配偶者、四親等内の親族などに限られています。四親等内の親族とは、主に親・祖父母・子・孫・ひ孫、兄弟姉妹・甥・姪・おじ・おば・いとこなどです。その他、市区町村長が申し立てることもできます。

Q7
 
父のために後見制度の利用を考えています。後見人となった場合、後見人が食事の世話や実際の介護も行わなければならないのでしょうか。後見人の具体的な仕事とはどのようなものですか。また、後見人にはどのような人が選ばれるのでしょうか。

A7
 成年後見人の仕事は、本人の財産管理や契約などの法律行為に関するものに限られており、食事の世話や実際の介護などは、一般に成年後見人の仕事ではありません。

 成年後見人は具体的には、本人の財産状況を明らかにするため財産目録を作ったり、本人に代わって介護サービスの利用契約や施設の入所契約などを行います。成年後見人等を誰にするかについては、本人の事情に応じて、家庭裁判所が選任します。本人の親族以外にも、法律・福祉の専門家などが選ばれる場合があります。

Q8
 
一般的に成年後見人選任までの手続の流れはどのようなものになりますか。

A8
 まずは、申立人が申立書等の書類を用意し、家庭裁判所に後見開始の申立てを行います。
 申立て後、裁判所の調査官が、申立人、後見人候補者、本人から事情を聴いたり、必要があれば家事審判官が直接事情を尋ねたりします。調査や審問の終了後、精神鑑定の依頼を医師に行うこともあります。
 以上の手続が終了すると、家庭裁判所は後見等の開始の審判をすると同時に、最も適任と思われる方を成年後見人等に選任します。

Q9
 
申立に必要な書類や費用はどのようになっていますか。

A9
 必要な書類や費用のうち主要なものは次のとおりです。
申立書(申立書には収入印紙800円を貼付します)
診断書
収入印紙(2600円)・・・後見等が開始したとき裁判所がその内容を登記するために要する費用です。
郵便切手・・・裁判所から審判書を送付したりするときの郵便費用です。額については申立をする裁判所により異なります。
本人の戸籍謄本
鑑定料・・・場合によって本人の判断能力を確認するため医師による鑑定が必要になる場合があります。額については個々の事案によって異なります。 

 申立てに必要な費用は原則として申立人が負担します。
 経済的に余裕のない方については、法テラスによる各種援助を利用できる場合がありますので、費用の点についてもあわせて当事務所までご相談下さい。