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ホーム法律の話(ブログ)交通事故よく問題となる傷病名から(医学的基礎) > 腱板断裂の後遺障害

腱板断裂の後遺障害

腱板断裂になると、保存療法で経過しても、手術療法をとっても、痛みが残ったり、運動の制限が残ることがあります。

痛みについては、神経症状として、次の等級に該当する可能性があります。
14級9号 局部に神経症状を残すもの
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
12級の「頑固」な神経症状といえるためには、画像所見が必要とするのが賠償実務の考え方なので、MRIで腱板断裂の所見があると、12級の可能性が出てきます。

運動の制限については、可動域制限として、次の等級に該当する可能性があります。
12級6号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
10級10号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
そして、12級6号は4分の3の可動域制限が基準とされ、10級10号は2分の1の可動域制限が基準とされます。

この可動域制限でよく問題となるのは、腱板断裂の場合、他の人に腕を持ち上げてもらえば(他動)、普通に腕が上がるのに、自分で腕を上げようとしても(自動)、腕が上がらないという点です。
後遺障害等級の認定基準では、他動の可動域で等級を認定することとなっているので、他動で可動域に制限がないと、後遺障害非該当とされてしまいます。
他動ではなく、自動で可動域制限を判断すべきことを、具体的に説明する意見が必要です。
具体的には、自賠責の後遺障害認定にも利用される、労災の認定基準には、こんなふうに書いてあります。
「原則として、他動運動による測定値によることとするが、他動運動による測定値を参考とすることが適切でないものについては、自動運動による測定値を参考として、障害の認定を行う必要がある。」
その「他動運動による測定値を採用することが適切でないもの」の例として、次の2つがあげられています。
「末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となり、他動では関節が可動するが、自動では可動できない場合」
「関節を可動させるとがまんできない程度の痛みが生じるために自動では可動できないと医学的に判断される場合」
腱板損傷で前者は無理ですから、後者にあたることを証明しなければなりません。「医学的に判断される」ためには、画像を必要とするのが賠償実務ですから、MRIで腱板断裂の所見が残っていることが必要ですし、関節唇損傷(かんせつしんそんしょう)を合併していたりすると、認められやすいでしょう。

また、腱板断裂の経過で、肩関節の拘縮が起こったりすると、他動にも制限が出てくるので、可動域制限が認められやすくなる可能性があります(次回へ)。