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自賠責様式の診断書の転帰欄

交通事故の場合、医療機関は、治療費の一括対応中、自賠責様式の診断書を作成して、加害者側の任意保険会社へ提出しています。
また、一括対応終了後の健康保険による通院についても、終診後に自賠責様式の診断書の作成をお願いすることが多いです。
自賠責様式の診断書は、被害者請求時には、自賠責損害調査事務所が認定・判断する上での根拠資料となりますし、訴訟となれば、裁判所へ証拠として提出されることとなるため、診断書の記載内容は重要です。

このような重要な資料である自賠責様式の診断書ですが、その書き方については、必ずしも統一的な理解がされているわけではないようで、特に、転帰欄の「治ゆ」「継続」「中止」の書き方(該当のものに〇をつけます。)は、医療機関によって個性が出ます(損害料率算出機構が、用語の定義を公開していないことが、そもそもの原因でしょうが。)。
統一の書式にバラバラの記載では困るということで、平成24年に、茨城県医師会の主導で、損害保険協会および損害料率算出機構の協力の下、「自賠責様式診断書作成マニュアル」(平成28年改定後は「交通事故関連文書作成真マニュアル」)が作成されています。
上記マニュアルには転帰欄の記載についても説明されているため、参考となります。

まず、「治ゆ」についてですが、日常用語の治ゆよりも、やや広い意味で使われており、症状などが消失し完治に至った医学的な「治ゆ」の状態はもちろんのこと、それ以外にも、症状が残存して症状固定した場合も、「治ゆ」に当たるとされています。
ところが、症状が完治した場合にのみ、「治ゆ」に〇をつけるものといった誤解もあるようです。
そのような誤解をしている場合、症状が残存し症状固定となれば、どれに〇をつけているかというと、「中止」に〇を付けている医師が多い様に感じます。
この場合、治療は終了しているため「継続」には当たらず、症状が残存しているため「治ゆ」にも当たらないと考えれば、消去法として「中止」に当たると考えるのでしょう。
もっとも、「中止」とは、「治ゆ」には至っていない状態、すなわち、症状の消失にも至らず、未だ症状固定にも至っていない状態にもかかわらず、患者の申し出等により、通院を止めた場合を言うとされています。
したがって、症状固定となった結果通院を終了した場合は、上記「治ゆ」の定義も踏まえれば、「中止」ではなく、「治ゆ」に〇をつけることが正解ということとなります。

つぎに、「継続」についてですが、これも誤解に基づく記載が見受けられます。よくある誤解としては、保険会社からの治療費の打ち切り後に、健康保険で通院を継続した場合です。このとき、打ち切り後も、通院自体は継続しているため、打ち切りのあった月の診断書には、「継続」に〇をつけることとなりますが、「中止」や「治ゆ」に〇がついている診断書をよく見かけます。
この場合、打ち切りのあった翌月の診療報酬明細書にも、「初診」と記載があるものが多いようです。これについても、誤りであり、正しくは「再診」と記載することになります。
いったん治療費の支払いが打ち切りになると、交通事故の治療に関しては症状固定とし、以降は、交通事故ではなく私病として通院しなければならいという誤解から、このような、誤った記載をしているものと思われます(打ち切りと症状固定が連動しない点は、別の記事(症状固定時期について)で触れています。)。

非常にこまかい話しですが、保険会社は、被害者に不利な記載があれば、厳しく指摘してくるため、適切な賠償を得るためには、正しい記載が必要です。