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脳脊髄液減少症のこれまでとこれから

(脳脊髄液減少症がどのような病気なのかについては、今回はふれません。ごめんなさい。)

むち打ち損傷のうち、特に症状が重いものとして、低髄液圧症候群とか脳脊髄液減少症と呼ばれるものがあることが知られてきたのは、この10年くらいの間でした。

最初は、一部の医師(その代表が篠永正道医師)が、重いむち打ち損傷の中に低髄液圧症候群があると主張し、その治療(ブラッドパッチといいます。)に取り組みはじめました。
そして、そのころ(2006年頃まででしょうか。)、低髄液圧症候群として、比較的高い後遺障害を認める判決もいくつか見られました。
その医師たちは、より適切には脳脊髄液減少症と呼ぶべきだとして、その診断基準を、脳脊髄液減少症研究会ガイドライン作成委員会「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」まとめました(その冒頭の要約→こちら)。

しかし、このころから、むち打ち損傷により起こる低髄液圧症候群ないし脳脊髄液減少症の診断基準がいい加減だといわんばかりの批判が損保会社サイドから巻き起こり、一時、裁判所も、全くこの病気を認めない時期が続きました。
実は、原総合法律事務所でも、この時期、2件の脳脊髄液減少症のケースを扱ったことがあるのですが、裁判所は否定的でした。

その後、ようやく議論が落ち着き、まず、2010年、日本脳神経外傷学会が「外傷に伴う低髄液圧症候群」の診断基準を発表しました(→こちら)。
そして、2011年、厚生労働省の脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究班が、「脳脊髄液漏出症画像判定基準・画像診断基準」を明らかにしたのです(→こちら)。この研究班の基準は、関係する8つの学会が了承したもので、今後は、この研究班の基準により、脳脊髄液減少症が診断されるものと思われていました(ちなみに、この研究班には、篠永正道医師も入っています。)。

そうであれば、当然、裁判所も、この研究班の基準により脳脊髄液減少症の判断をすることが予想されていたところで、2012年8月27日の各紙の報道によると、横浜地裁が、2012年7月にこの基準により「脳脊髄液減少症の疑いが相当程度ある」として、加害者側に約2300万円の支払いを命じる判決を言い渡していたことが分かったとのことです。

少なくとも、この研究班の基準を定着させていくことが、これからの私たち被害者側弁護士の役目だろうと思うのです。