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ホーム法律の話(ブログ)交通事故よく問題となる傷病名から(医学的基礎) > 中心性頚髄損傷という名前って何?

中心性頚髄損傷という名前って何?

「頚髄」というのは、頚椎(首の骨)の中を通る神経の束=脊髄だろうし、「損傷」というのは傷付くことだろうというのは分かります。

では、どうして「中心性」なのかというと。。。
文字どおり、頚髄の中心部分が傷付いたからということのようなのです(正確には、ようだったのです。)。
頚髄の外側は主に下肢(足)の神経が通っていて、内側に行くと上肢(手)の神経が通っているため、頚髄の中心が傷付くと、手が足に比べて不釣り合いに障害される(麻痺などが出る)と説明されていたのです(今も、そういう説明が多いです。)。
そもそも中心性頚髄損傷の定義が、「損傷レベル以下の上肢の機能が下肢機能に比べて不釣り合いに優位に障害されている症候群」とされるぐらいですから。

といわれるのを、ずっと信じてきたのですが、最近呼んだ論文に、頚髄の外側に下肢の神経が通り、頚髄の内側に上肢の神経が通るというのは、実は仮説に過ぎなくて、解剖的には証拠が見付かっていないという海外の論文が紹介されていました(Nathan PW, Smith M, Deacon P. The corticospinal tracts in man: course and location of fibers at different segmental levels. Brain 1990; 113: 303-24.)。むしろ、上肢、下肢の神経は、頚髄の中にまばらに存在するという報告もあるというではありませんか(Levi AD, Tator CH, Bunge RP. Clinical syndromes associated with disproportionate weakness of the upper versus the lower extremities after cervical spinal cord injury. Neurosurgery 1996; 38: 179-83.)。(決して、私が英語の論文を読んでいるわけではありません。ちょっとかっこつけて英文の論文を貼り付けてみただけです。)

だとすると、「中心性」というネーミングは間違いだったのでしょうか。
でも、そうするとどうしてより上肢に障害が出てくるのでしょうか。

分からないことだらけです。

結局、現代医学をもってしても、分からないことだらけで、医学的に証明できないから、症状はない、事故による後遺障害ではないなどという損保会社側の主張は、実は非科学的で、傲慢としかいえないというのが、今日、言いたかったことでした。
全ては、被害の実態から出発しなければならないのです。